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2025 年 7 月（国内では 8 月）に熱力学平衡計算ソフト FactSage 8.4 がリリースされました。

プロセス計算用のアドオンが 2 つ（FactFlow, FactProSim）追加されました。アドオンは保守契約期間内にドングルライセンスで利用可能です。熱力学データベースについても大きな更新があり、FACT イオン性有機物データベース（FTionx）と SGTE2024 合金データベース（SGTE2024）が追加されました。

このページでは主な新機能と熱力学データベースの追加・更新を紹介します。詳細は開発元のウェブページ FactSage 8.4 の紹介（英文）をご覧ください。

プロセス計算用アドオン FactFlow, FactProSim

簡単な例として水銀の揮発製錬を紹介します。このプロセスは以下のとおりです。

1. 原料を加熱して、空気中に水銀を気化させて、水銀を含む混合気体にする。
2. 混合気体を冷却して水銀を取り出す。

このプロセスで生成する水銀の量は、平衡計算を 2 回実施することで予測することができます。このような複数回の平衡計算を簡単に行えるアドオンが 2 つ（FactFlow, FactProSiim）追加されました。両者のできることは似ているのですが、使い勝手は異なります。

FactOptimal の高速化

FactOptimal は最適な組成を探索するツールです。今回、計算時間が 1/10 程度になりました。

FACT イオン性有機物データベース (FTionx) の追加

FactSage 8.4 では代表的なイオン液体の系が解析できるようになりました。

SGTE2024 合金データベース (SGTE2024) の追加

• 更新または追加された二元系（SGTE2022 との比較）
  Ag-As, Ag-P, Ag-S, Ag-Sm, Ag-Yb, Al-Am, Al-H, Al-K, Al-Na, Al-Tl, As-Te, As-U, As-Zn, Au-Dy, Au-Gd, Au-Lu, Au-Th, Au-Yb, B-Er, B-La, B-Lu, B-Pr, B-Ta, B-Tm, B-Zn, Ba-Fe, Ba-Ga, Ba-Ge, Ba-Yb, Be-C, Bi-Cr, Bi-Rh, C-Dy, C-Y, Ca-Ce, Ca-Fe, Ca-Ni, Ce-Pr, Ce-Pt, Ce-Te, Co-La, Co-Mg, Co-Nd, Co-Te, Co-Th, Cr-Re, Cr-U, Cs-Mo, Cu-Dy, Cu-Pu, Cu-Ta, Cu-U, Dy-Si, Dy-Zn, Er-Ge, Er-Zn, Eu-Ga, Fe-Ho, Fe-Lu, Fe-Pu, Fe-Rh, Fe-Th, Fe-Tm, Ga-Te, Gd-Sm, Gd-Ti, Gd-Tl, Ge-Lu, H-Mg, H-Na, H-Nb, Hf-Ru, Hg-Te, Ho-Ni, Ho-Sb, Ho-Zn, In-Ir, In-Na, In-Sr, Ir-Ti, K-Sb, K-Te, K-V, La-Mn, La-Mo, La-Nd, La-Pb, La-Pr, Li-Te, Nb-Re, Pb-Se, Re-Ta, S-Sn, Se-Sn, Sn-Te, Sr-Te
• 更新または追加された三元系（SGTE2022 との比較）
  Ag-Sn-Te, Al-Si-Sr, As-Ga-Zn, Be-C-Si, C-Dy-Si, C-Si-Y, Ca-Ce-Mg, Ca-Mg-Sn, Ga-Hg-Mg, Pb-Se-Sn

FACT 酸化物データベース (FToxid) の更新

以下の系について予測精度が向上しました。

• K₂O-FeO-Fe₂O₃-Al₂O₃-SiO₂
• SnO-SnO₂-MgO-CaO-FeO-Fe₂O₃-Al₂O₃-SiO₂
• SnO-SnO₂-SiO₂-ZnO
• SnO₂-ZrO₂-TiO₂
• ZrO₂-Na₂O-CaO-Al₂O₃-SiO₂

FACT 塩データベース (FTsalt) の更新

Na, K // Cl, CO₃, SO₄, S₂O₇, CrO₄, Cr₂O₇, MoO₄, Mo₂O₇, O 系の解析が可能になりました。

FACT アルミニウム合金・マグネシウム合金・チタン合金データベース (FTlite) の更新

解析可能な二元系は 1017 種類（8.3 は 992, 8.2 は 932）になりました。

FactSage 銅合金データベース (FScopp) の更新

解析可能な二元系は 685 種類（8.3 は 603, 8.2 は 515）になりました。構成元素に B, Ce, La, Nd が追加されました。

FactSage 鉛合金データベース (FSlead) の更新

解析可能な二元系は 238 種類（8.3 は 235, 8.2 は 223）になりました。

FactSage スチールデータベース (FSstel) の更新

解析可能な二元系を下図に示します。

• 更新または追加された系：Mu 相, Sigma 相を含む系
  Co-Mo, Fe-Mo, Co-Nb, Nb-Ni, Fe-Nb, Ni-Ta, Fe-Ta, Co-Fe-Mo, Fe-Mo-Ni, Co-Mo-Ni, Co-Cr-Mn, Cr-Mn-Ni, Co-Cr-Fe, Co-Fe-Mn, Co-Cr-Ni, Fe-Ni-Ta, Co-Fe-Nb, Cr-Nb-Ni, Fe-Nb-Ni, Co-Cr-Fe-Mn
• 更新または追加された系：水素を含む系
  Al-V-H, Co-V-H, Fe-V-H, Ni-V-H
• 更新または追加された系：その他
  Fe-P-X, Cu-O, Ni-P-S, Cr-Ni, Co-Cr, Cr-Ta, Cr-Ti

Spencer グループ耐火物データベース (SpMCBN) の更新

100 の三元系について更新がされました。

• 更新された B を含む三元系の数： 33
• 更新された C を含む三元系の数： 34
• 更新された N を含む三元系の数： 30
• 更新された Si を含む三元系の数： 3

その他の熱力学データベースの更新

FACT 純物質 (FactPS), FACT miscellaneous (FTmisc)

関連リンク

• FactSage 8.3 リリースのご案内
• FactSage のご案内