こんがりネズミ
By M.Sato
熱輻射による加熱は、産業界において重要な処理過程になっています。 熱輻射は高温度になるほどその効果が顕著になり、熱移動の媒体を必ずしも必要としません (真空中でも可能です)。
モデル・設定
輻射熱の輸送方程式は、一般的に以下のような式で記述されます。
$$ \frac{dI(\vec{r}, \vec{s})}{ds} + (a + \sigma_s)I(\vec{r}, \vec{s}) \ = an^2 \frac{\sigma T^4}{\pi} + \frac{\sigma_s}{4\pi}\int_0^{4\pi} I(\vec{r}, \vec{s}’)\Phi(\vec{s}\cdot\vec{s}’)d\Omega’ $$
ここで
$\vec{r}$: 位置ベクトル
$\vec{s}$: 方向ベクトル
$\vec{s}’$: 散乱方向ベクトル
$s$: 経路長
$a$: 吸収係数
$n$: 屈折率
$\sigma_s$: 散乱係数
$\sigma$: ステファンボルツマン定数($5.669\times 10^{-9} W/(m^2 K^{4})$)
$I$: 放射強度(位置$\vec{r}$と方向$\vec{s}$の関数)
$T$: 温度
$\Phi$: 位相関数
$\Omega’$: 立体角
この熱輻射輸送方程式と適切な境界条件を考慮することで、加熱空間内における放射強度$I$、 および境界温度を計算することができます。
ここでは、円筒形の加熱炉内に物体を置いた場合にどのように放射強度および温度が変化していくかを計算してみました。 計算に使用したモデルは Discrete Ordinateモデルです。 精度よく計算を行うため、放射熱方向を$\Phi$方向、$\theta$方向にそれぞれ4分割、 また境界におけるオーバーハングを防ぐため、ピクセレーションを3に設定しています。

解析結果
以下に、ANSYS Fluentで100秒まで計算した時の放射強度、および温度の経時変化を示します。 放射強度はその境界に入射する加熱源となる放射熱フラックスを表しています。 この計算結果からネズミの耳の内側などは輻射熱が届きにくいため、放射強度および温度が低くなっていることが分かります。
弊社の解析事例
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