FluentとChemkin-Pro(Rotating Disk CVD Reactor)
By J.Aono
CVDとは?
半導体製造では,回転ディスクCVD(Chemical Vapor Deposition:化学蒸着法)反応器を用い薄膜を形成させます.このときの薄膜の堆積やエッチング速度を特定するのには数値シミュレーションが役立ちます.CVDは化学種の輸送,化学反応(壁表面反応)を伴う,複雑な流れ場です.
FluentとChemkin-Pro
ANSYS製品の中にはFluentとChemkin-Proがあります.両者とも化学反応を取り扱うことができます.Fluentは3次元まで解析することができるので,詳細な検討を行うことができます.一方で,Chemkin-Proは1次元の簡易解析をすることができるので,パラメータスタディなどを速く実行することができます.
今回はベンチマーク問題としてよく知られている,Kleijnら1の回転ディスクCVD問題で,FluentとChemkin-Proの結果を比較してみたいと思います。ANSYS社のWebinarにもありますが,弊社でもモデルを作成し比較しました.
Kleijnの回転ディスクのベンチマーク問題
Kleijnら1の回転ディスクのベンチマーク問題1の境界条件です.X_SiH4=0.001, U_in=0.0964m/s, T_in=300K,T_s=1000K,回転ディスクは104.72rad/s(1,000rpm)です.
Fluentを使った数値計算
Fluentでは計算コスト削減のため2次元軸対称モデルを使います.計算格子は回転軸をx軸周りにしなければならないため、上記の図1を90度回転させた格子を用意します.左側から右側に流れを与えています.
次にReactionsのVolumetricとWall Surfaceをオンにし体積反応と表面反応のメカニズムを入力します.
Setup > Models > Species(Species Transport, Reactions)
速度分布を確認すると,回転ディスクの縁の部分で速度が大きくなっていることが確認できます.
Chemkin-Proを使った数値計算
InletとRotating Disk CVD Reactorモデルを利用し,ベンチマーク問題と同じ反応メカニズムと流れの条件を入力します.
FluentとChemkin-Proの比較
Chemkin-Proでは,回転軸部分について計算することができるので,回転軸について比較しました.
まずは回転軸の温度プロットの比較です.
次に主要な化学種のモル分率のプロットです.回転ディスク付近で変化が大きくなるため,x軸の範囲を変更しています.
FluentとChemkin-Proの結果はよく一致していることが確認できます.
おわりに
今回は,Chemkin-Proに導入されているRotatint Disk CVD ReactorモデルとFluentを比較しました.両者の結果はよく一致することが確認できました.回転軸の分布のみ知りたい場合などはChemkin-Proが有効に使えそうです.
弊社の解析事例
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