超臨界水の物性を用いたCFD
By J.Aono
超臨界物性と理想気体モデル
Fluentではアメリカの国立標準技術研究所(NIST)が開発しているREFPROP1からデータベースを作成し,CFDの計算中にそのデータベースを参照することができます.気体の計算では,温度や圧力が大きく変化し,それに伴い密度も変化する場合は,理想気体の状態方程式が用いられることがあります.しかし,理想気体の状態方程式は常圧の部分はNISTデータベースとよく一致しますが,物性が超臨界状態になると理想気体の状態方程式ではNISTデータベースと一致しなくなります.例えば,地熱発電で利用される水の状態を想定し,温度は500℃と,圧力は0.1MPaから40MPaまでプロットすると下記のようになります.
常圧の部分は理想気体の状態方程式とNISTデータベースはよく一致していますが,圧力が高くなると理想気体の状態方程式とNISTデータベースとずれが大きくなります.
FluentのNISTデータベースの利用方法
FluentでNISTデータベースを利用する場合は,CUIの下記のコマンドから利用することができます.今回の例では,超臨界水を考えます.
/define/user-defined/real-gas-models/nist-real-gas-model
作動流体はwaterを設定,圧力・温度の範囲などを設定,データベースを作成します.データベースを作成しましたら,FluentのGUIの設定->セルゾーン条件->流体をクリックし,流体の物質を設定します.NISTデータベースを利用する際は,下記のように物質名の部分を"real-gas-water"と設定します.
理想気体の状態方程式を使う場合は,FluentのGUIの設定->物性->流体を右クリックし,Fluentデータベースからwater-vapor(h2o)をコピーします.コピーしましたら,密度の部分を"ideal-gas"と設定します.
最後に,FluentのGUIの設定->セルゾーン条件->流体をクリックし,流体の物質を設定します.
Fluentで理想気体の状態方程式とNISTデータベースの結果の比較
理想気体の状態方程式とNISTデータベースの違いをCFDで確認するため,簡単なモデルを使いFluentで計算します. モデルは軸対称2次元のパイプを仮定し,左端の入口の圧力境界を全圧40MPa, 温度を500℃とします.右端の出口の圧力境界は静圧30MPaとします.計算した結果の密度と軸方向速度分布を示します.
理想気体の状態方程式を使った計算結果(密度)
NISTデータベースを使った計算結果(密度)
理想気体の状態方程式を使った密度の最大値$98.3kg/m^3$で,NISTデータベースを使った使った軸方向の最大速度は$158.2kg/m^3$となりました.左端の入口部分では圧力が高いため,理想気体の状態方程式とNISTデータベースの密度は大きく異なります.次に速度分布を示します.
理想気体の状態方程式を使った計算結果(軸方向速度)
NISTデータベースを使った計算結果(軸方向速度)
理想気体の状態方程式を使った軸方向の最大速度は444m/sで,NISTデータベースを使った使った軸方向の最大速度は349m/sとなりました.入口出口で圧力を固定しているため,速度に違いが生じます.
気体や超臨界状態の流体を計算する場合は,状態方程式が重要になる場合がありますので,下記のような表が作成できると思います.
| 気体 | 超臨界流体 | |
|---|---|---|
| 理想気体の状態方程式 | $\circ$ | $\times$ |
| NISTデータベース | $\circ$ | $\circ$ |
今回は密度・圧力・温度について調べましたが,超臨界状態では輸送物性・熱物性も気体の場合と大きく異なる場合がありますので注意が必要です.また超臨界状態を扱う場合は,実在気体の状態方程式を使った計算方法もあります.
弊社の解析事例
弊社の流体解析事例については、下記のリンクからご覧ください.