流入する流体を区別して見よう
By M.Sato
はじめに
流体の流れを計算していると、複数の流入境界から流体が流入し、それらが合流して流出するといった例をよく見かける。
例えば、以下の図に示すような例である。

このような場合、流入する流体は同じであるかもしれないし、異なる物性値の流体であるかもしれない。
複数の流入境界があり、そこから流入する流体を区別したい場合にはどのようにすればよいかを考えてみる。
ベクトル図、流線による流入の区別
まず、メッシュを作成して計算してみる。

OpenFOAMを使って計算して得られた流れ場の様子を示す。ここでは simpleFOAMを使った。

流速ベクトル図だと各空間点毎の流速方向しかわからない。
そこで流入境界から入った流体粒子の軌跡を書いてみる。
すると確かに、流入境界の位置に依存して流体粒子は異なる経路で流れていることがわかる。

それでは、流入した元々の境界を区別してその情報を計算に反映するにはどのようにすればよいだろうか?
上図に示したように流線を描けば流入元がわかるので、ある空間点から上流側に遡って(時間を逆方向に積分)すればよいかもしれないが、かなり大変そうである。
評価したい空間点が数千個もあるとその評価だけでかなり時間が掛かりそうである。
トレーサー濃度を使用した流入の区別
実は、このような場合、流線を逆方向に積分しなくても簡単に流入境界位置を検出する方法がある。
それは流入境界からトレーサ粒子を放出し、計算で得られたトレーサ濃度を調べるという方法である。
これは各流入境界から異なる色のインクを流すと考えればよい。
再びOpenFOAMを使って計算してみる。
今回はトレーサ濃度の移流拡散のみを計算すればよいので、 scalarTransportFoam というソルバーで計算して見た。
流入-1で濃度値1、流入-2で濃度値0と設定した。
計算結果図を以下に示す。
この計算結果により流入境界位置に応じて流体が色分けされていることがわかる。

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最後まで、読んでいただき、ありがとうございました。
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