実践：MVCモデル(1)

By S.Nagao

September 24, 2020

本記事では、プログラミング開発において有用なフレームワークであるMVC（Model-View-Controller）モデルを、 VTK-wrap-Javaプログラミングを通じて、理解します。

これが正しいかどうかは判らないですが、取りあえず、こう考えたら分かりやすかった、という個人的見解に基づいた記事です。

第一回は、Modelを理解しましょう。

（VTK-wrap-Javaとは、C++で書かれた可視化用ライブラリVTKを Java言語で記述できるようラッピングしたものです。詳しくは、VTK/Java Wrappingをご覧ください。）

Model - アプリケーションの実体

Modelクラスといった場合、動いているプログラムに必要なデータ群というのが、最もピッタリくるでしょうか？

例えば、メッシュファイルを画面に表示するプログラムがあったとします。これを、Prog-Aとします。この時、Prog-AプログラムのModelクラスについて考えます。

まず、ファイル入力が必要ですね。ReadMeshClassです。このクラスは、ファイルが指定された時、ファイルを入力してメモリに保存します。vtkDataReaderクラスを宣言します。

ReadMeshClass
　　private filename;
　　private vtkDataReader;

次に、メッシュの情報を画面に表示するために、データを表示しやすい形式に変換するFilterMeshClassが必要で、このクラスは、vtkGeometryFilterクラスを宣言します。また、ReadMeshClassから継承して作成します。

FilterMeshClass extends ReadMeshClass
　　private vtkGeometryFilter ;

次に、vtkWindowに表示するためには、データをvtkActorと結合しなければなりません。ここで、FilterMeshClassを継承して、MeshDataクラスを作成します。このクラスには、 vtkActorクラスを宣言します。

vtkActorクラスは、 vtkMapperクラスを必要とするので、同様に定義します。

MeshData extends FilterMeshClass
　　private vtkMapper ;
　　private vtkActor ;

ここまでで、３つのクラスのツリーができました。 ReadMeshClass、FilterMeshClass、MeshDataです。これらのクラスを初期化するメソッドinitializeメソッドが必要ですね。すべてに宣言します。

ここで、FilterMeshClass、MeshDataクラスでは、super.initialize()として、親のメソッドを参照します。各々のクラスでは、クラスに宣言されたVTKクラスのみを初期化します。

それぞれのクラスに、virtualメソッドを定義して、親を参照するやり方は、多くのメソッドに拡張できます。

例えば、クラスのパラメタを書き出す、読み込むメソッド、 readParam、writeParamメソッドとして同様に定義できます。それぞれのクラスのreadParam、wariteParamメソッドでは、そのクラスに宣言されたクラスに必要なパラメタのみを扱います。

これらを追加すると、各クラスは以下のようになります。

ReadMeshClass
　　private filename;
　　private vtkDataReader;
　　public initialize();

FilterMeshClass extends ReadMeshClass
　　private vtkGeometryFilter ;
　　override initialize() {super.initialize(); …}
　　override readparam() {super.readParam(); …}
　　override writeparam() {super.writeParam(); …}

MeshData extends FilterMeshClass
　　private vtkMapper ;
　　private vtkActor ;
　　override initialize() {super.initialize(); …}
　　override readparam() {super.readParam(); …}
　　override writeparam() {super.writeParam(); …}

VTKライブラリ特有のメソッドも必要です。 VTKのパイプラインを生成するメソッドを、pipelineCreateとでもしましょう。これも、initializeメソッドと同様に、virtualメソッドとして定義できます。

ReadMeshClass
　　private filename;
　　private vtkDataReader;
　　public initialize();
　　public pipelineCreate();
　　public readParam() ;
　　public writeParam() ;

FilterMeshClass extends ReadMeshClass
　　private vtkGeometryFilter ;
　　override initialize() {super.initialize(); …}
　　override pipelineCreate() {super.pipelineCreate(); …}
　　override readparam() {super.readParam(); …}
　　override writeparam() {super.writeParam(); …}

MeshData extends FilterMeshClass
　　private vtkMapper ;
　　private vtkActor ;
　　public addActor();
　　override initialize() {super.initialize(); …}
　　override pipelineCreate() {super.pipelineCreate(); …}
　　override readparam() {super.readParam(); …}
　　override writeparam() {super.writeParam(); …}

クラスを設計するとき、同じ機能は、同じ名前のメソッドとして、 virtualメソッドとして定義します。このようにすることで、クラス群の見通しがよくなります。同じ名前のvirtualメソッドを、拡張ではなく書き直したいときは、 super.xxxx()と参照することをやめ、オーバーライドします。

メソッドを拡張するかしないかは、臨機応変に考えて、設計するほうがいいように思います。こうしないといけないと言う法則は、有りません。

Javaは、何も宣言しなくともprivateメソッド以外は、virtualメソッドになります。 protectedメソッドをpublicメソッドとしてオーバーライドはできません。

あるクラスを見たとき、注目しているメソッドがオーバーライドされているかどうか分からない場合は、 @overrideタグをつけます。最近のC++には、もう少し考えられた文法があるようです。

今回は、ここまで。
次回は、実践：MVCモデル(2)です。

java
vtk