自動ヘキサ・メッシングを利用したブロッキング手法
By K.Yoshimi
6面体メッシュ(ヘキサメッシュ)は、数値シミュレーションやコンピューター・グラフィックスの分野で、 数値誤差を減らせる点や、要素数を低減できる点など、四面体メッシュなどの他の要素に比べて優位性があるため、 しばしば、好んで使われます。
しかしながら、6面体メッシュを作成するのは、高い熟練度やセンスが要求される職人技であり、 これを理由として、6面体メッシュの利用が容易ではない状況になっています。
このため、全自動で6面体メッシュを生成する自動ヘキサメッシングへの期待は大きく、 過去30年以上にわたり、研究開発がなされてきました。しかし、
- メッシュ品質(歪みの小ささ)の悪化する
- 形状の特徴線を捕捉しきれない
- メッシュ数が増大する
などの諸問題を解決できず、全自動の6面体メッシャーは未だ実現に至っておりません。
ここでは、まだ不完全な全自動ヘキサメッシング技術と人力ヘキサメッシングを組み合わせることで、 職人技である6面体メッシュの生成を、凡人でも行えるようにする方法を探ります。
ブロッキング手法による6面体メッシュの作成
人間が6面体メッシュを作成する1つの方法として、ANSYS ICEM CFDに実装されている、 ブロッキング手法が挙げられます。
ブロッキング手法とは、下図に示すように、形状からヘキサメッシュを容易に作成できる小領域(ブロック)に分割してから、 個々のブロックに対してヘキサメッシュを作成する手法です。

このブロッキング手法は、習得にやや時間がかかる一方、 6面体メッシュに対して、形状への適合度やメッシュ粗密の調整、メッシュ品質の向上が図れるなど、多くの利点を有しています。
特に、注目すべき点として、下図のように、既にあるヘキサメッシュから、ブロックを再構成できることが挙げられます。

今回は、このヘキサメッシュからブロックを再構成する機能と、全自動ヘキサメッシングを組み合わせます。
全自動ヘキサメッシング
全自動ヘキサメッシングの手法はさまざま提案されていますが、ここでは、ポリキューブを使用した手法を利用します。
ポリキューブを使用した手法は、基本的には
- 形状に対して、4面体メッシュを作成
- 四面体メッシュから、x, y, z軸に平行なポリキューブを作成
- ポリキューブの整数座標線からヘキサメッシュを抽出
の手順で実行されます。
下図は、ポリキューブを使用した手法の1つであるCE-PolyCubeを用いた例です。

CE-PolyCubeは、ヘキサメッシュの辺を形状の特徴線上に乗せようとしますが、 ポリキューブに変換した際に、特徴線をポリキューブの辺上に置けない場合は、ヘキサメッシュでその特徴線を再現できません。 また、メッシュの粗密を付ける機能もありません。
今回は、この欠けた機能を、ブロッキング手法で補います。
ヘキサメッシュからブロック抽出
それでは、全自動ヘキサメッシング手法で作成した6面体メッシュを、ANSYS ICEM CFDの機能で、ブロックに変換します。

ご覧のように、凡人ではすぐに思いつかないようなブロックが自動で出来上がりました!
こうして、ブロックが抽出できれば、メッシュの粗密を変更したり、形状への適合度を上げたりすることができるようになり、 (素人でも)実用に耐えるヘキサメッシュが作れる道が開かれました。
下図は、抽出したブロックを利用して、メッシュの粗密を変更する例です。

最後に
今回は、職人技である6面体メッシュの作成を、ブロッキング手法と不完全な自動ヘキサメッシャーを組み合わせることで、 凡人でも6面体メッシュを作成する方法を探りました。
実際には、自動ヘキサ・メッシャーが、複雑な形状に対して、いつでも、ある程度の6面体メッシュを作れるとは限りません。
なので、まだ実用的とは言えない方法ですが、自動ヘキサ・メッシャーの技術進展で、この方法の適用範囲が拡がることが期待されます。
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