FactSage 8.2 リリース
FactSage 8.2 リリース
2022 年 7 月(国内では 8 月)に熱力学平衡計算ソフト FactSage 8.2 がリリースされました。
新登場の Calphad Optimizer アプリには熱力学データベース開発者が待ち望んでいた機能が多数実装されました。Viscosity アプリは大幅に改良されて、計算速度は 10 倍以上となりました。その他、多くのアプリが更新されています。熱力学データベースの更新も広範囲です。FACT 硫化物データベースと SGTE 合金データベース(SGTE2022)が追加されました。
このページでは主な新機能と熱力学データベースの追加・更新を紹介します。詳細は開発元のウェブページ FactSage 8.2 の紹介(英文)をご覧ください。
平衡計算機能の向上
平衡計算機能は継続的に改良が行われています。今回は同時に考慮できる元素数が 70(FactSage 8.1 では 48)、同時に考慮できる物質数が 7,000 (FactSage 8.1 では 5,000)に引き上げられて、多成分系の解析がさらに容易になりました。
Calphad Optimizer
熱力学平衡計算や状態図計算では熱力学データベースが必要です。熱力学データベースには最適化されているギブズエネルギー関数が収録されています。これまで熱力学データベースの開発者は最適化ツールとして OptiSage を使用していました。 FactSage 8.2 には OptiSage の後継アプリとして Calphad Optimizer が追加されました。新しいデザインになり機能も操作性も大きく向上しています。

上図では OptiSage と Calphad Optimizer の画面を比較しています。最適化されていない熱力学データベースと測定値を設定したところです。

OptiSage と Calphad Optimizer の最適化後の画面を比較しています。Calphad Optimizer では最適化された熱力学データを使って計算された活量、混合エンタルピー、状態図が自動的に図示されます。
粘度推算アプリの高速化
10 倍程度の高速化がされました。

(gram) 41.9 Al2O33 + 37.9 SiO2 + 20.3 Na2O 系の粘度推算結果です。FactSage 8.2 では FactSage 8.1 と比較して、計算時間が 1/20 に短縮されました。
FACT 酸化物データベース (FToxid) の更新
以下の系の予測精度が向上しました。
- Cu-CaO-MgO-FeO-Fe2O3-NiO-PbO-Al2O3-SiO2
- Ni-CaO-MgO-FeO-Fe2O3-Al2O3-SiO2
- As-Cu2O-CaO-FeO-Fe2O3-PbO-ZnO-SiO2
- S-Cu2O-CaO-MgO-FeO-Fe2O3-NiO-PbO-ZnO-As2O3-Al2O3-SiO2

FACT 硫化物データベース (FTsulf) の追加
従来 FTmisc に収録されていた硫化物系のデータが大幅に更新されて、新たに FACT 硫化物データベース(FTsulf) として独立した熱力学データベースになりました。FToxid, FactPS と組み合わせることで 合金-硫化物-酸化物-気体の解析が可能です。

FACT アルミニウム合金・マグネシウム合金データベース (FTlite) の更新
解析可能な二元系 932 種類(8.1 は 864)になりました。構成元素に O と Mo が追加されました。
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- 主要な系の溶融合金について表面張力のデータが追加されました。
FactSage 銅合金データベース (FScopp) の更新
解析可能な二元系 545 種類(8.1 は 422)になりました。構成元素に Mo と Na が追加されました。
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FactSage 鉛合金データベース (FSlead) の更新
解析可能な二元系 253 種類(8.1 は 161)になりました。構成元素に Ge と Si が追加されました。
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FactSage スチールデータベース (FSstel) の更新
- 構成元素に Ce, Dy, Er, Eu, Gd, Ho, Lu, Nd, Pr, Sc, Sm, Tb, Tm, Y, Yb が追加されました。
- ネオジム磁石に関連する系(Fe-Nd-B-Dy-Pr-Tb)の解析ができるようになりました。
- Fe-Cr-Mo-Nb-Ni-Ta 系の予測精度が向上しました。
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- 更新または追加された主な系:希土類元素
Fe-RE (RE = Ce, Dy, Er, Gd, Ho, La, Lu, Nd, Pr, Sc, Sm, Tb, Tm, Y)
Mn-RE (RE = Ce, Dy, Er, Gd, Ho, La, Lu, Nd, Pr, Sc, Sm, Tb, Tm, Y)
Co-RE (RE = Ce, Dy, Er, Gd, Ho, La, Nd, Pr, Sm, Y)
Ni-RE (RE = Ce, Dy, Er, Gd, Ho, La, Nd, Pr, Sm, Tb, Y)
Si-RE (RE = Ce, Dy, Er, Gd, Ho, La, Nd, Pr, Sc, Sm, Tb, Tm, Y)
Al-RE (RE = Ce, Dy, Er, Eu, Gd, Ho, Lu, Nd, Pr, Sc, Sm, Tb, Tm, Y, Yb)
Mg-RE (RE = Ce, Dy, Nd, Pr, Tb)
Fe-La-Si - 更新または追加された主な系:ネオジム磁石
Fe-Nd-Dy-B + 少量の Pr, Tb, Cu, Ni, Co, etc.
B-Sn, B-Pb, B-Zn, B-Dy, B-Tb, B-Pr, B-Nd, B-Mg, Mg-Ni, etc. - 更新または追加された主な系:超合金
Mo-Ni, Fe-Ta, Ni-Ta, etc.
Cr-Nb-Ni, Mo-Ni-Ta, Fe-Ni-Ta, Mo-Nb-Ni

SGTE2022 合金データベース (SGTE2022) の追加
解析可能な二元系は 784 種類(SGTE2020 は 669)です。
- 更新または追加された二元系(SGTE2020 との比較)
Ag-Co, Ag-Dy, Ag-Er, Ag-Ge, Ag-La, Ag-Na, Ag-Nd, Al-Ba, Al-Pu, Al-Re, Al-S, Al-Te, Al-U, Al-Yb, Am-Fe, Am-Ga, Am-Np, Am-Pu, Am-U, Am-Zr, Au-Ce, Au-Ga, Au-Nd, Au-Pt, Au-Sc, B-Cd, B-Ce, B-Ga, B-Nb, Ba-Bi, Ba-Mg, Ba-Ni, Ba-Pb, Ba-Ti, Ba-V, Be-Mo, Be-Pu, Be-Si, Be-V, Bi-Cs, Bi-Dy, Bi-Er, Bi-Fe, Bi-Gd, Bi-Ho, Bi-La, Bi-Li, Bi-Mg, Bi-Mn, Bi-Na, Bi-Rb, Bi-Se, Bi-Sr, Bi-Te, Bi-Ti, Bi-U, Bi-V, Bi-Yb, C-Ge, Ca-In, Ca-Pb, Ca-Sn, Ca-Ti, Ca-V, Cd-Fe, Cd-Ge, Cd-Mg, Cd-Mn, Cd-Pu, Cd-Se, Cd-Sr, Cd-Te, Cd-Ti, Cd-V, Cd-Y, Ce-La, Ce-Nd, Ce-Sn, Ce-Ti, Ce-Zn, Ce-Zr, Co-Hf, Co-Re, Co-Sr, Co-U, Cr-Na, Cu-Hg, Cu-Na, Cu-Se, Cu-W, Er-Ge, Er-Ti, Er-Zr, Eu-Pb, Eu-Te, Fe-In, Fe-Np, Ga-La, Ga-Li, Ga-Na, Ga-Sr, Ga-Tb, Ga-Tl, Ga-V, Ga-Zr, Gd-Pb, Gd-Y, Gd-Zn, Ge-Hf, Ge-K, Ge-Mn, Ge-Nb, Ge-Sc, Ge-Yb, Ge-Zr, Hf-Mn, Li-Sb, Mg-Pb, Mn-Sm, Si-Te, Sr-Zr - 更新または追加された三元系(SGTE2020 との比較)
B-Mo-Ti, B-Ti-Zr

その他の熱力学データベースの更新
FACT 純物質 (FactPS)、FACT 塩 (FTsalt)、SGTE 合金 (SGTE 2020)、Spencer グループ耐火物データベース (SpMCBN)、IRSN 原子力関連 (TDnucl)、IRSN 核燃料 (TDmeph)
関連リンク