Fluid Analysis流体解析

凝固・融解モデルと理論解の比較

Ansys Fluentの凝固・融解モデルとStefan問題の理論解を比較検証。エンタルピー・空隙率法による氷の融解シミュレーションと、Alexiadesらの解析解の高精度な一致を確認します。

相変化プロセス:凝固・融解現象 固相(氷) T < T_melt 加熱 Q (熱量) 相変化領域 (半溶融領域) T = T_melt 潜熱 Ĥ_LV 液相(水) T > T_melt エンタルピー・空隙率法による相変化の数値モデル化

はじめに

Ansys Fluentでは、凝固や融解が(純金属の凝固・融解のように)特定の温度で発生する流体流れの問題を解析することができます。

Ansys Fluentでは、固液の接触領域を明示的に追跡する代わりに、エンタルピー・空隙率法を使用しています。ここでは、氷が融解して水に変化する時間精度を確認します。


Stefan問題

相変化の時間精度を調べるには、Stefan問題がよく知られていて、Alexiadesらの理論解があります。この問題は1次元の問題で、相の界面の位置を調べる問題です。

Stefan問題:1次元相界面の時間発展 時刻 t₁ 固相 液相 x_Γ(t₁) 壁面 T_wall 時刻 t₂ (t₂ > t₁) 固相 液相 x_Γ(t₂) 相界面移動 x軸 x_Γ(t) = 2γ√(α_l t) 凡例 固相(氷) 液相(水) 相界面 時間経過とともに相界面が移動し、液相領域が拡大

相界面の位置

相の界面は次の式で表されます。

$$x_{\Gamma}(t) = 2\gamma\sqrt{\alpha_l t} \tag{1}$$

ここで、\(x_{\Gamma}\)は相の界面位置、\(\alpha\)は温度拡散率、\(t\)は時間、\(\gamma\)は一定値、下添字\(l\)は液相です。\(\gamma\)は次の式の超越方程式を満たします。

$$\gamma e^{\gamma^2} \text{erf}(\gamma) = \frac{C_{p_l} (T_{\text{wall}}-T_{\text{melt}})}{\hat{H}_{LV} \sqrt{\pi}} \tag{2}$$

パラメータの定義

  • \(\hat{H}_{LV}\):潜熱
  • \(C_p\):定圧比熱
  • 下添字\(\text{melt}\):凝固点

温度分布の理論解

温度分布は次のように表すことができます。

$$T_l(x,t)=T_{\text{wall}} + \frac{T_{\text{melt}}-T_{\text{wall}}}{\text{erf}(\gamma)} \text{erf}\left(\frac{x}{2\sqrt{\alpha_l t}}\right) \tag{3}$$

ここで、\(T\)は温度、\(\alpha\)は温度拡散率、\(\hat{H}_{LV}\)は潜熱、\(C_p\)は定圧比熱です。この理論解とAnsys Fluentの結果を比較します。


Ansys Fluentの融解・凝固モデル

解析条件の設定

エンタルピー・空隙率法の概念 エンタルピー H vs 温度 T H T 固相 相変化 (潜熱) 液相 T_solidus T_liquidus 半溶融領域 液相率β と流動抵抗 液相率: β = (H - H_solid) / (H_liquid - H_solid) 0 ≤ β ≤ 1 流動抵抗(ソース項) β = 0 完全固化(流動なし) 0 < β < 1 半溶融領域 (流動抵抗 ∝ A_mush) β = 1 完全液化(自由流動) 固液接触領域を明示的に追跡せず、液相率βで流動抵抗を制御

ここでは氷が溶けて水になる数値計算を考えます。設定パラメータは以下の通りです。

主要パラメータ

  • 固相線温度:\(T_{\text{solidus}} = 272.15\,\text{K}\)
  • 液相線温度:\(T_{\text{liquidus}} = 273.15\,\text{K}\)
  • 半溶融領域定数:\(A_{\text{mush}} = 100,000\)(デフォルト値)
  • 計算領域:\(10\,\text{mm}\)の氷を配置
  • 壁面温度:\(T_{\text{wall}} = 273.15\,\text{K}\)

初期温度は\(272.15\,\text{K}\)とし、氷とします。

計算モデルの概要図
計算モデルの概要図

計算格子は100セルの等分割としました。初期に氷を配置し、左側の壁は\(273.15\,\text{K}\)の等温壁を設定します。氷が水になる融解温度は\(273.15\,\text{K}\)とします。

体積分率の時間変化

次に氷と水の体積分率の計算結果をアニメーションで示します。青色が氷を示し、赤色が水を示します。左側から氷が融解し、水に変化していることが確認できます。

氷と水の体積分率アニメーション
氷と水の体積分率の時間変化(青:氷、赤:水)

理論解とFluentの計算結果の比較

Alexiadesらの理論解とAnsys Fluentの計算結果を比較します。

比較方法

  • 白色から青色のカラーマップ:式(3)の理論温度分布
  • 黒い実線:式(1)の理論相界面位置
  • 赤色の丸マーカー:Ansys Fluentの相界面(体積分率\(0.5\))
理論解とFluent計算結果の比較
理論解とAnsys Fluent計算結果の比較

理論解と良く一致していることが確認できました。エンタルピー・空隙率法による数値解法の高い精度が実証されています。


おわりに

凝固・融解モデルの検証プロセス Stefan問題 理論解(Alexiades) 相界面位置: x_Γ(t) = 2γ√(α_l t) 温度分布: T(x,t) 理論式 解析解 Ansys Fluent 数値解析モデル エンタルピー・ 空隙率法 液相率 β 計算 100セル等分割 数値解 比較検証 相界面位置 温度分布 高精度な一致を確認 検証完了 検証結果 ✓ 理論解との一致 ✓ 時間精度確認 ✓ モデル妥当性 実用解析への 適用可能 エンタルピー・空隙率法の高い精度が理論解との比較により実証

検証結果のまとめ

今回は、Ansys Fluentの凝固・融解モデルの時間精度について、理論解と比較しました。半溶融領域の定数や固相・液相線温度のパラメータがありますが、氷と水の場合は今回の設定で理論解と良い一致を得ることができました。

参考文献

V. Alexiades, A. Solomon, Mathematical Modeling of Melting and Freezing Processes, Hemisphere, Washington, D.C., 1993.


流体解析・ソフトウェア お問い合わせ

ご相談・ご質問、技術的なご質問、お見積り依頼(年度内※急ぎ、来年度予算)など、下記よりお問合せください。

凝固・融解現象の数値シミュレーションにより、相変化プロセスの高精度な予測と最適化をサポートいたします。解析する目的が明確な方に限らず、漠然と「こういう解析がしたい」と思っている方でも、解析担当者がご相談に応じます。

関連資料ダウンロード

JKA Social Action 競輪とオートレースの補助事業 ものづくり補助金支援 FEMAP NX ASTEA MACS Ver.12 3次元温度応力解析 MECHANICAL FINDER 有限要素法による骨強度解析ソフト