ユーザ事例/水銀ターゲット容器
大強度陽子加速器施設における水銀ターゲット容器のキャビテーション対策として、気液混相流解析により気泡注入効果を評価し、壊食対策と冷却性能向上を実現した事例をご紹介します。
独立行政法人 日本原子力研究開発機構 J-PARC様
水銀ターゲット容器の流体解析
プロジェクト概要
大強度陽子加速器施設(J-PARC)における水銀ターゲット容器の設計最適化プロジェクト。パルス状陽子ビーム入射による圧力波とキャビテーション発生のメカニズム解明、および対策技術の開発を目的とした流体解析を実施しました。
背景
独立行政法人日本原子力研究開発機構様の大強度陽子加速器施設(J-PARC)様では、水銀ターゲット容器でパルス状の大強度陽子ビーム入射による容器内部を流れる水銀の体積膨張による圧力波でキャビテーションを誘発し容器壁面を壊食させる可能性が指摘されておりました。
解決すべき課題
- 圧力波によるキャビテーション発生:パルスビーム入射時の急激な体積膨張
- 容器壁面の壊食リスク:キャビテーション崩壊による材料損傷
- 冷却性能の確保:高熱負荷条件下での効率的な熱除去
解決策(検討評価内容)
キャビテーション対策としてターゲット容器内の水銀流路の設計検討を行い、さらに水銀中へ微細な気泡を均一に分散させる為の気液混相流の解析を行い、気泡注入がターゲット壁面に及ぼす壊食対策及び冷却性能向上への影響を評価しました。
解析アプローチ
- 水銀流路の設計最適化:流れパターンの改善によるキャビテーション抑制
- 気液混相流解析:ヘリウム気泡注入による圧力波緩衝効果の評価
- 壊食リスク評価:気泡分布と壁面への影響の定量化
解析結果
温度コンター図

陽子ビーム入射による発熱と水銀流れによる冷却のバランスを評価し、ターゲット材の温度分布を可視化しています。
粒子軌跡図

旋回流として流入したヘリウム気泡粒子の挙動を追跡し、容器内での気泡分散状態を評価しています。
気泡合泡・分離解析
気泡分布図

解析条件
- 流体系:水銀(連続体相)+ ヘリウム気泡(分散相)
- 気泡注入量:0.1%
- 解析手法:離散ポピュレーションバランス法(10等級で気泡径を分級)
- 評価項目:遠心力、浮力の効果による気泡分布の偏り
解析結果:ヘリウム気泡濃度分布の流下方向への変化(10等級で気泡径を分級し、離散ポピュレーションバランス法を適用。遠心力、浮力の効果により気泡分布に偏りが生じる)
Fluent Population Balance Model
Fluentには population balance model として3種類の計算方法が選択できます:
- 離散ポピュレーションバランス法(Discrete Method)
- 標準モーメント法(Standard Method of Moments)
- 求積モーメント法(Quadrature Method of Moments)
今後の見通し
ターゲット容器の更なる流路検討と合わせて、気泡注入部の設計によりターゲット容器壁面の壊食対策及び冷却性能向上が図れると考えられます。
期待される効果
- キャビテーション抑制:微細気泡による圧力波の緩衝効果
- 壊食リスクの低減:気泡分布制御による壁面への影響軽減
- 冷却性能の向上:流路最適化による熱除去効率の改善
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