Fluid Analysis流体解析

事例詳細/半導体製造装置

半導体製造プロセスにおけるCVD装置内の流れや化学反応を数値シミュレーションで解析します。装置改良やスケールアップ時の性能予測により、効率的な装置開発を支援します。


半導体製造装置内の流体解析

概要

半導体製造装置は装置改良やスケールアップ時に流体解析で性能が得られるか確認する必要があります。この事例ではCVD(Chemical Vapor Deposition:化学蒸着法)装置内の流れや化学反応を確認しております。

化学反応を伴う流れでは、時間依存を考慮し、熱と物質の移動、化学反応を考慮するアレニウスの式を用いております。これにより、反応速度や堆積率の正確な予測が可能になります。

CVD装置の構造と動作原理 反応器(CVDチャンバー) ガス導入口 Ga(CH₃)₃ AsH₃ ガス拡散領域 ウエハー(回転ディスク) 回転 回転 ヒーター(高温) 堆積 排気口 排気口 原料ガスが高温ウエハー上で化学反応し、GaAs薄膜を形成 回転により均一な成膜を実現
CVD装置の基本構造と化学蒸着プロセスの概要

モデル図

CVD装置の簡易モデルを以下に示します。複数の気相反応と表面反応を考慮できます。ヒ化ガリウム(GaAs)を成長させる反応器モデルです。

CVD装置の解析モデル図
CVD装置の解析モデル図

反応プロセスの詳細

トリメチルガリウム(Ga[CH₃]₃)およびアルシン(AsH₃)が反応器に上部から流入し、高温の回転ディスク上を流れ、一様に循環するようにガリウムと砒素の析出層が回転ディスク上に堆積します。

ガスは層流状態で成長表面に向かい、ディスク上を外側に流れ、反応器から排出されます。本モデルではGaとAsの同時堆積をシミュレーションしています。

GaAs CVDにおける気相反応と表面反応 気相反応領域 ① トリメチルガリウムの熱分解 Ga(CH₃)₃ → Ga + 3CH₃ 高温により有機金属が分解 ② アルシンの熱分解 2AsH₃ → 2As + 3H₂ 水素を放出して砒素原子生成 拡散 拡散 表面反応領域(ウエハー表面) ③ ガリウムの表面吸着 Ga → Ga(s) ウエハー表面にGaが吸着 ④ 砒素の表面吸着 As → As(s) ウエハー表面にAsが吸着 ⑤ GaAs結晶の形成 Ga(s) + As(s) → GaAs(結晶成長)
GaAs CVDにおける気相反応と表面反応の詳細メカニズム

解析例

CVD装置における伝熱・物質移動の複合現象 伝熱プロセス ヒーター(高温) 熱伝導 ウエハー 対流 ガス加熱領域 エネルギー保存式:ρCₚ(∂T/∂t) = ∇·(k∇T) + Q 物質移動プロセス 原料ガス供給 拡散 濃度境界層 ウエハー 吸着・堆積 排気 質量保存式:∂C/∂t = ∇·(D∇C) - v·∇C + R 伝熱と物質移動の連成解析により高精度な成膜プロセス予測を実現
CVD装置における伝熱・物質移動の複合プロセス

ウエハー部の流速分布

回転するウエハー上での流速分布を可視化。均一な成膜に重要な流れパターンを確認できます。

ウエハー部の流速分布
ウエハー部 流速分布

ウエハー表面のガリウム付着分布

ウエハー表面におけるガリウムの堆積率分布。均一性の評価と最適化に活用できます。

ウエハー表面のガリウム付着分布
ウエハー表面のガリウム付着分布

アルシン(AsH₃)濃度分布

反応器内のアルシン濃度分布。反応の進行状況と原料ガスの消費を確認できます。

アルシン(AsH₃)濃度分布
アルシン(AsH₃)濃度分布

解析から分かること

回転ディスクCVD反応器でのマクロな気体の流れ、伝熱と物質移動化学種拡散、および化学反応(表面反応を含む)をモデル化できます。

解析から得られた知見

  • 二段階の表面反応:サイト化学種を含めた詳細な反応機構の解析が可能
  • 同時堆積プロセス:回転サセプタでのガリウムと砒素の同時堆積を確認
  • 成膜均一性:ウエハー全面での堆積率分布により均一性を評価
  • プロセス最適化:流速、温度、濃度分布の解析により最適条件を導出
CVD装置の流体解析プロセスフロー Step 1: 形状作成・メッシュ生成 反応器・ウエハー・ヒーターの3Dモデル化 Step 2: 流れ場・伝熱設定 • 乱流モデル(層流/k-ε等) • ヒーター温度境界条件 • 回転ディスク(移動境界) Step 3: 化学反応設定 • 気相反応(アレニウス式) • 表面反応(吸着・堆積) • 化学種拡散係数 Step 4: 物性値・ガス特性設定 Ga(CH₃)₃、AsH₃の拡散係数・密度・粘度 Step 5: 連成解析実行 流れ・伝熱・物質移動・化学反応の連成計算 反復 収束 結果①: 流速・温度分布 流れ場と温度場の可視化 結果②: 濃度分布 化学種の空間分布 結果③: 堆積率分布 ウエハー表面の均一性評価
CVD装置の流体解析プロセスフローと評価指標

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