流体力学メモ - 熱輻射
熱輻射による加熱は、産業界において重要な処理過程になっています。熱輻射は高温度になるほどその効果が顕著になり、熱移動の媒体を必ずしも必要としません(真空中でも加熱が可能です)。熱輻射輸送方程式と適切な境界条件を考慮することで加熱空間内における放射強度、および境界温度を計算することができます。
熱輻射の特徴
熱輻射の主な特性
- 媒体不要:真空中でも熱が伝わる(対流・伝導とは異なる)
- 温度依存性:高温度になるほど効果が顕著になる
- 電磁波による伝熱:赤外線を中心とした電磁波により熱が移動
- 産業応用:焼成炉、熱処理炉、乾燥炉などで広く利用
セラミックス製品の熱輻射シミュレーション
ここでは円筒形の加熱炉内に物体を置いた場合にどのように放射強度および温度が変化して行くかを計算しました。計算に使用したモデルはDiscrete Ordinate モデルです。精度よく計算を行うため、放射熱方向をΦ方向、θ方向にそれぞれ4分割、また境界におけるオーバーハングを防ぐためピクセレーションを3に設定しています。
計算モデルの設定
- 解析手法:Discrete Ordinate モデル(離散座標法)
- 放射方向の分割:Φ方向4分割、θ方向4分割
- ピクセレーション:3(境界のオーバーハング防止)
- 解析対象:円筒形加熱炉内のセラミックス製品
解析モデル

放射強度の経時変化

解析結果の考察
放射強度はその境界に入射する加熱源となる放射熱フラックスを表しています。この計算結果からネズミの耳の内側などは輻射熱が届きにくいため、放射強度および温度が低くなっていることが分かります。
解析から得られた知見
- 形状の影響:複雑な形状では輻射熱の到達度に差が生じる
- 温度分布の把握:放射強度の分布から温度分布を予測可能
- 加熱ムラの検討:製品の凹部や陰になる部分の加熱不足を評価
- 炉の設計最適化:効率的な加熱条件の検討が可能
熱輻射解析により、実験では測定困難な炉内の放射強度分布や温度分布を詳細に把握することができます。これにより、製品品質の向上や加熱炉の設計改善に役立てることができます。
関連情報
セラミックス製品の熱輻射解析の詳細については、以下のページもご参照ください。
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