事例:LNGタンクの冷却システム
システム概要とモデル化
スクリプトコンポーネントは、Flownex上でMicrosoft C#を利用するためのエディタとコンパイラです。Flownexの全てのライブラリと関数を利用して、ユーザー定義のコンポーネントやソルバーを作成することができます。
ここではスクリプトコンポーネントの基本的な使用例を示す目的で、LNG(液化天然ガス)タンクの冷却システムをスクリプトで作成しています(PIDやExcelコンポーネントでも対応可能です)。FlownexによるLNGタンク冷却システムの簡易的なモデルを図 1に示します。

図 1 FlownexによるLNGタンク冷却システムの簡易モデル
スクリプトは二つ使用されています。一つはLNGタンク内の温度を見ながら冷却システムのON/OFFを行なっています(Cooler script)。もう一つはLNGタンクからの放出ガス(BOG)の量を計算しています(Calculator script)。
Cooler scriptによる冷却制御
Cooler scriptの一部を図 2に示します。Cooler scriptはLNGタンクからタンク内の温度を取得して、温度が -159.5℃になると冷却システムをOFFにします。温度が上昇して -158.5℃になると冷却システムをONにします。また、On_Offパラメータを0にすると冷却システムが作動しなくなります(故障を想定)。

図 2 Cooler script
Calculator scriptによるBOG計算
Calculator scriptの一部を図 3に示します。Calculator scriptはLNGタンク上部のリリーフ弁を通過する天然ガスの流量を積算しています。リリーフ弁はタンク内の圧力が126kPaになると作動します。

図 3 Calculator script
解析結果:冷却システム制御
Cooler scriptによる冷却システムのON/OFF制御の過渡解析結果です。温度の上限・下限に応じて適切に制御されていることが確認できます。

図 4 冷却システムのON/OFF
解析結果:リリーフ弁の動作
タンク内圧力が設定値(126kPa)に達した際のリリーフ弁の開度変化を示します。過剰な圧力上昇を防ぐために適切に作動していることが確認できます。

図 5 リリーフ弁の開度
解析結果:タンク内温度変化
LNGタンク内の温度の時間変化を示します。冷却システムの制御により、温度が設定範囲内(-159.5℃~-158.5℃)で適切に維持されていることが確認できます。

図 6 LNGタンク内の温度
解析結果:タンク内圧力変化
LNGタンク内の圧力の時間変化を示します。リリーフ弁の作動により、圧力が126kPa付近で制御されていることが確認できます。

図 7 LNGタンク内の圧力
解析結果:液面高さ変化
LNGタンク内の液面の高さの時間変化を示します。BOGの放出とともに液面が徐々に低下する様子を確認することができます。

図 8 LNGタンク内の液面の高さ
解析結果:気相割合変化
LNGタンク内の気相の割合の時間変化を示します。液相が減少し気相が増加する過程を定量的に評価することができます。

図 9 LNGタンク内の気相の割合
解析結果:BOG放出量
Calculator scriptによって計算された天然ガスの放出量(BOG)の時間変化を示します。リリーフ弁を通過するガスの積算量を評価することができます。

図 10 天然ガスの放出量



















